恋人の犬が虹の橋を渡った。
ちょうど恋人が出張で家をあけていたときだった。
なんと声をかけたらいいのか分からなかった。
私はペットを飼ったことがないけれど、大好きだった祖父を亡くしている。ペットロスは、家族を失うことと等しいだろう。
わたしだったら、と考える。
わたしの祖父は無条件に無償の愛をくれたし、それがいつも感じられた。誰よりも、両親よりも、わたしの理解者だった。
そんな祖父がいなくなったとき、「もうこの世にわたしを愛してくれる人はいないんだ」と思った。
今もまだうっすら悲しい。たぶんずっと悲しいままだと思う。
その悲しみを誰と共有したいとは思わないし、「わかるよ」なんて相槌をされたら、分かるはずなんかないとイラつくだろう。
けれど、もしあのとき、誰かに悲しみを吐き出せていたら、なんて言ってほしかっただろうか。
恋人はいたっていつもどおりに見える。
根掘り葉掘り聞くのも違うと思う。
悲しさを一緒にもつことは叶わないし、できることも少ないけれど、強めにギュッと手を握ることにしよう。
少なくともわたしはそうしてほしかったから。