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♡ショートストーリー♡
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【鈴虫】
「ねぇ、ママ。」
淳子の息子、陸が保育園から帰ってきて言う。
「しぬって、なあに?」
どこで聞いたのだろう。淳子は、料理していた手を止め
「消えてなくなることよ。ママが死んだら陸には会えなくなるのよ。」
「えっ……ずっと?」
「ずっとよ、ずっと会えないの。」
淳子はそう言って、「鈴虫を飼おうか。」
と提案した。
「かう、かう!」
陸は嬉しそうに笑った。
鈴虫は、すぅーすぅーと鳴いているようだ。りんごやナスをエサにあげた。
夏の暑い日差しをカーテンで隠した。
2ヶ月後、飼っていた鈴虫ぜんぶが死んだ。鈴虫は、寿命が短いのだ。
陸はそれを見て、「しんじゃったの?」と言った。「そうよ、動かないでしょう。」
陸は分かった。「しぬ」という意味を。
「お庭にうめてあげる!」と、かけていった。
その1年後、おじいちゃんが亡くなった。
動かず箱の中に入っているおじいちゃんを見て、陸は「しんじゃったんだね。もう会えないんだね。」と言って泣いた。
鈴虫を飼った経験は良かったと思う。
淳子は陸が泣いている背中をさすって、
お別れの言葉を言おうね、と言った。
「おじいちゃん、だいすきだったよ。天国にいってね。」
〜終わり〜